2011年11月28日月曜日

シードラウンドにおける転換社債のメリットは何か?

What are the benefits of debt in a seed round?
http://venturehacks.com/articles/debt-benefits

転換社債はしばしばシードラウンドでの最善の選択となる。それは便利で割安でお手軽だからだ。転換社債を活用すれば、あなたは資金調達をさっさと済ませ、またすぐに事業に集中できる。それは企業にとっても投資家にとっても素晴らしいことだ。

創業まもないころであれば、転換社債を活用した$50-$500K程度のシードファイナンスは、資本を譲渡する有効な手段となり得る。転換社債は、次の資金調達までのつなぎであるため”ブリッジローン”としても知られている。

転換社債(短期借入)は銀行から融資を得るのとは違う。融資は銀行にとって回収すべきものであるが、転換社債は、貸し手にとっても企業にとっても、シリーズAラウンドが終了すれば、資本に転換されるべきものなのである。(この素晴らしいファイナンスツールについて書かれた入門書"Yokum Taku's series on convertible debt”を読むべし)

シードラウンドの社債はエクイティラウンドよりも遥かに簡便である。エンジェルが投資家である場合はなおのことである。ベンチャーキャピタルが債権者となる場合は少し用心が必要だろうが、それでもVCデッドファイナンスは、VCエクイティファイナンスより遥かに簡単なのだ。

では、なぜシードラウンドにおいて社債が資本の代替手段となり得るのだろうか?その答えは、Convenience(利便性)、Suitability(フィット感)、Control(制御)、cost(割安さ)、speed(お手軽さ)にある。




1.Convenience(利便性)
社債契約は理解しやすく扱いが簡単だ。もし人生で初めて資金調達をするのであれば、大きな二つのメリットが得られるはずだ。債権債務条項はたかだか1~2ページ程度で、クロージングドキュメントは10ページにも満たない。債権債務条項で交渉すべきものはそれほどないのだ。ためしにシリーズAのタームシートと比べてみてほしい。あちらはデッドラウンドでのクロージングドキュメントと同じくらい長いのだ。社債に関する交渉や取り纏めは、典型的なシリーズAのタームシートを交渉するにあたってよい練習となるだろう。

2.Suitability(フィット感)
シードラウンドにある企業に対する適切な事業評価や投資家権利をどうやって決めればいいか誰か分かっているのだろうか?
企業の評価とレバレッジは何もないところから、製品・ユーザー・売上と進むにつれてどんどん変化していく。創業してすぐのリスクが高いビジネスに投資するのは大して競合もしないので、創業者は自らが
考える最低限の事業評価を交渉することはほとんどない。
しかし、彼らが最低限と考える事業評価は大概高すぎであり、シリーズAラウンドにおいては評価が下がるいわゆるダウンラウンドとなってしまう。
ダウンラウンドでは、創業者は企業が成長していても金を失っていると考え、エンジェルはリスクをとってもうまくいかないと考え、シリーズA投資家はいけてない奴を相手にしていると考えてしまう。
結局シードラウンドで割安かあるいは適度な事業評価を設定した後すぐに、シリーズAラウンドで高い事業評価になるのは難しい。わずか数ヶ月前に株を買ったシード投資家より高い株価で買おうとするシリーズA投資家はなかなかいないのだ。

社債であれば、こうした事業評価も、投資家権利を詳細に詰めることも、オプションプールシャッフルも全てを後回しにできるし、シードラウンドの投資家は割引債やワラント債を通じて上昇局面を掴むことができるのだ。

3.Control(統制)
創業者はたいていデッドラウンド後でも会社をコントロールし続ける。
彼らは取締役の過半数或いは全部を掌握する。シードラウンドのエクイティ投資家、特にベンチャーキャピタルはしばしばは取締役の座を求めるが、社債投資家、特にエンジェル投資家は必ずしもそうではない。取締役会を掌握できれば、取締役会へ報告する煩わしさも減るし、取締役と執行の共通認識も得やすくなる。

また、創業者は優先株ではなく普通株の過半数を所有している。したがって、会社を$10Mで売却することもできるし、デット投資家に$2Mを与え$8Mを持ち帰ることもできる。ためしに売却拒否権を持つ防衛条項付きの優先株を持つエクイティ投資家にそれをしてみればいい(まず無理だろう)。特に、ベンチャーキャピタリストはしばしば大きなファンドを持ち、$10Mではなくもっと大きなリターンを狙っているのだ。
最後に、もし社債を発行すれば、あなたはexitの必要ない利益の高いビジネスを創り経営することができる。エンジェル投資家は、債権だろうが資本だろうが関係なく、四半期ごとに大きな配当を得ることができてハッピーだろう。ベンチャーキャピタリストは四半期の配当など狙ってはいない。彼らは彼らの投資家に利益をもたらすために、会社を売却するかIPOする必要があるのだ。ベンチャーキャピタルから借り入れるのは、exitしないビジネスを持ち続けることを意味する。つまり、期限が来ればいつでも社債を返済することができるのだ。それでもやはり、Exitを考えていないビジネスでVCから資金を借り入れることはお勧めしない。それは不誠実だ。

4.Cost(割安さ)
債権債務契約は交渉可能で、弁護料は$10K以下ですませることができる。弁護士が議論する余地はほとんどない。定型的文言を修正する必要がほとんどないのだ。シリーズAのタームシートを交渉し取り纏めるには弁護料として$20~60Kはかかる。シードラウンドで$100Kを調達するために、わざわざそんなに大金をかける必要があるのだろうか?
我々の”Convertible debt hacks”と"Yokum Taku's series on convertible
debt”を読めば、さらに弁護士費用を削減することができる。

5.speed(お手軽さ)
投資家が一旦条件について話す準備ができれば、一週間で交渉可能だし、その一週間後にはディールがクローズするだろう。契約は明瞭簡潔。議論することもほとんどない。一方でエクイティファイナンスは、交渉に2週間、クローズするまでにさらに4~6週間はかかる。

シードラウンドにおいては借入がベストな選択となる
転換社債は、シードラウンドにおいてしばしば最善の手段となる。社債なら割安でお手軽に取り纏めることができ、すぐさま本業に専念できるのだ。これは企業にとっても投資家にとっても素晴らしいことである。なぜなら、スタートアップにとってスピードこそが最大の競争力だからだ。もし、起業家や投資家が利便性・低価格・スピードを重視していないとすれば、シードラウンドでの社債の意味を履き違えている!

シードラウンドは、創業者がエクイティファイナンスをするには最悪のタイミングだ。どんな会社かまだぼんやりして、創業者の経験も浅い。キャッシュも時間もいくらあっても足りない。創業チームは複雑なタームシートに関し交渉なんかしていないで、自分達のビジネスの仮説を検証し続けるべきなのだ。

”ビジネスパートナー”と自認する投資家であれば、素早く資金調達をして、創業チームを顧客の元へと返すことこそが付加価値だと理解すべきだ。

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