2012年5月13日日曜日

クラウドファンディングにおける規制(1) : SEC White Paper;Rocket Hub


本文章はRocket hub によってSECに提出された「Regulation of Crowd funding; Building on the Jumpstart our business startups Act」の翻訳です。Rocket Hubより許可を得て翻訳しています。原文はSECのサイトにWhite paperとして掲載されています。
http://www.sec.gov/comments/jobs-title-iii/jobstitleiii-39.pdf



非常に長いので今回は概要が書かれている第1章をご紹介します。


<クラウドファンディングとはなにか?>
クラウドファンディングとは、インターネット上でソーシャルメディアを活用しながら、コミュニティの力によってファンドレイジングすることである。コストが安く、ステータスが逐次アップデートされる等のフィードバックのメカニズムを通して、資金集めをしている側と資金を提供する側の頻繁なコミュニケーションがありながら、投資家としては低いコミットメントである、というような特徴が見られる。

クラウドファンディングという言葉は、この10年程度で使われ始めた言葉で比較的新しくはあるものの、そのやり方はコミュニティをベースとしたソーシャルな行動様式に深く根ざしている。コミュニティは何世紀もの間、新規事業開発や社会的なイニシアチブに資金提供をしてきたし、「家族や友人」はしばしばシードステージのビジネスに資金提供している。インターネットの普及により、このコミュニティをベースとしたファンディングがオンラインで行われることが可能になり、トランザクションコストの削減や潜在的なオーディエンスを増やしている。このアプローチの成功は1億ドル以上のファンディングを可能にし、クリエイティブだったり、アントレプレナーシップに溢れていたり、社会的意義があったり、あるいは科学にまつわるベンチャーにクラウドを通したファンディングの機会を提供するような改革をもたらしてきた。

この成功は従来のファンディングの仕組みに対して、ソーシャルメディアをベースとしたファンディングプラットフォームの長所が存在する証拠でもある。スタートアップのコスト、マーケティグのコスト、トランザクションコスト等を削減することができる。同様に、これらの長所は資金へのコネクションやバックグランドを持たない、より小規模の事業を展開する起業家をクラウドファンディングのプラットフォームへ誘ってきた。

スタートアップやスモールビジネスはアメリカの経済成長に対して重要な役割を果たしている。Kauffman Fondation のレポートは「スターアップが存在しなければ、アメリカ全体の雇用は増えない」としている。また、アメリカで生まれる新しい仕事の65% は新しい雇用の機会を必要とするスモールビジネスによるものだ。健全なクラウドファンディング市場があればスタートアップが10%増加し、170,000の新たな雇用が次の5年間で生まれるともされている。しかし、この産業の成長は証券の売買に対する規制により限定的なものとなっている。そのかわり、アメリカのクラウドファンディング産業は、友達、家族、あるいはネットユーザーからの資金提供に対して物品や経験等の「特典」を提供することを対価とするやり方をとってきた。

アメリカ議会はクラウドファンディングによる資金調達の利点と潜在的な力を認識し、Title III of the JOBS Act(the CROWDFUND Act)により認可を得たクラウドファンディングのプラットフォームを活用した証券の販売を株式発行者に認め、クラウドファンディングのスモールビジネスのファンディングに対する役割を大きく広げている。

株式発行者およびクラウドファンディングプラットフォームにとって、この産業の拡大による変化は大変大きなものになることが想定される一方、私達はこの産業のいくつかのドライバーとなるような要素については規制を構築していくにあたって、その保持を留意すべき点があると感じている。

・クラウドファンディングはインターネットにより可能性が広がる
コミュニケーション、教育、そして支払いはインターネットを通してなされる。書類のやりとりはないか、最小限のものにとどまる。

・クラウドファンディングはコミュニティをベースとしている
ソーシャルメディアという拡散/進化し続けているコンセプトの時代においては、ファンドレイザーは自分たちのキャンペーンを貢献してくれる人や投資家に対してマーケティングするために自らのコミュニティのメンバーにリーチしなければならない。
同様に、それらのコミュニティはコミュニティメンバーによって共有されたフィードバックを提供する。このフィードバックは質の良い、信頼のできるファンドレイザーのキャンペーンを強化し、質の悪いファンドレイザーを取り締まり、罰するような機能も提供する。規制(当局)は人々の間での相互作用においてソーシャルメディアが果たす役割や、ソーシャルメディア上の情報や相互作用における信頼が次第に増えていることを認識するべきである。

・クラウドファンディングはソーシャルメディアと共に成長する
ファンドレイザーの成功は、キャンペーンそのもののメリットのみによるわけではなく、他の人たちを「説得」できるかどうかにかかっている。多くのオーディエンスを獲得するにはファンドレイザーは自らのネットワークの中にいる人だけを説得すればすむわけではなく、自らのコミュニティの中のメンバーそれぞれも自らのネットワークを、そのキャンペーンについて伝えることに活用することに同意してもらえるかどうかにかかっている。Facebook やTwitterのようなソーシャルメディアプラットフォームとのシームレスな連携や、ファンディングのプラットフォームへ新しいテクノロジーを取り入れる能力が、クラウドファンディングのキャンペーンの成長と成功に大きく影響をするだろう。ファンドレイザーはソーシャルネットワークとコミュニケーションを構築する能力なしには、必要なサポートを得ることはできないだろう。

・クラウドファンディングでのファンティングは少ない費用でできる
RocketHub.comのような既存のクラウドファンディグプラットフォームはファンドレイズされた額に対して平均4-6%の成果報酬型のフィーを課している。これに加えてクレジットカードの手数料がファンドレイザーにかかるコストだ。これはファンドレイザーが小額のファンドレイズをすることを可能にするだけでなく、クラウドファンディングのプラットフォームに、ファンドレイズの事前のコストが発生しないような仕組みにするようなプレッシャーを与えることになる。
クラウドファンディングのコストを上げるような規制は、スタートアップがクラウドファンディングを使ってファンドレイズする能力をそいでしまうだろう。



本文書はCROWDFUND Actと規制の構築について検討を行う。そして投資家保護のための適切な規制を行いながら、クラウドファンディングが起業家の資金調達に対して重要な役割を果たすことを可能にするようなアプローチに関する提言を行う。

<伝統的な資金調達方法との比較>
アメリカにおける伝統的な資金調達の方法には、債券、銀行借入、エンジェル投資家からの資金、投資銀行やブローカー/ディーラーなどの仲介業者・機関投資家からの資金などがあった。彼らは毎年何十億ドルもの資金提供を行っている一方、これらの資金提供者にはほとんどのスモールビジネスやスタートアップとなかなか相容れない3つの注目すべき欠陥を抱えている。
1.透明性が少ない
2.様々な種類の起業家/事業に対する構造的な差別
3.様々な種類の投資家に対する構造的な差別
これらの欠陥は何千もの企業やビジネスが必要な資金調達をすることを妨げている。クラウドファンディングは透明性を担保し、誰でも参加できるプラットフォームを提供することでこれらの欠点に対して直接的に介入することができる。クラウドファンディングのポータルサイトは資金調達の新たな道を開くことでイノベーションの新しい源や、雇用の増加、経済成長に貢献する。

・高い利子
クレジットカードによるファイナンスやPeer to Peer(個人から個人へ)のローンは一般的に最もコストのかかる資金調達の方法だ。また、起業家にとっては高いレベルのデフォルトリスクを負うことになる。アメリカにおけるクレジットカードによるファイナンスは、ビジネスの場合は平均で年率13%、個人の場合は14%となっている。Posper.com やLendingClub.com等のPeer to Peerローンのプラットフォームは平均で年率20%を課している。
信用度はTransunion、Experian、Equifaxなどの大手3社のどれかの与信機関による自動化された与信照会のチェックをすることで決定される。一般的には理解されていないが、このタイプの分析は不正確だったり古いデータによる影響を受けやすく、不正確な信用予測が増えている。

・銀行借入
銀行は通常、100,000ドル以下のローンには年率7-8%、100,000ドル以上のローンには年率6-7%で貸し付けている。起業家やその事業の財務水準、株式投資、収益、運転資金、担保、事業計画などを検討するようなホーリスティックなアプローチで信用度が決定されるやり方に比べると、銀行の貸し付けのプロセスは標準化されていない。マーケットの透明性はこれらの矛盾により減少する。また起業家や新興企業はトラックレコードや担保が無い、あるいは少ないことから不利になるため、多くのスタートアップが銀行借入を現実的な資金調達方法としては捉えていない。

・個人投資家
友達・家族や、エンジェルインベスターなどの個人投資家を活用することは、新興企業にとっては最もとりやすい方法の一つだ。しかしながら、投資家それぞれは法的に認可を受けるか、その免除を受ける必要がある。法律の定義によると一定以上の高い年収を得ているか一定以上の資産を持っていることが条件として規定されている。これにより、アメリカの人口の90%は新興企業に個人投資家として投資をする機会をもつことを妨げられている。
これらの厳しい法的な要求から、マイノリティや女性のエンジェル投資家はエンジェル全体の人口からするとマイノリティが4%、女性が12%にとどまっている。

・中間業者
投資銀行やブローカー/ディーラーなどの中間業者は認可された投資家と新興ビジネスをつなぐ役割を果たしている。彼らは適格投資家による既存のポートフォリオを注意深く守ろうとし、かつ非常に高いフィー(前払いの基本料と後払いのコミッションフィーの両方)を課す。したがって、たいていのケースで新興起業にとっては複雑でひどく高いサービスであることが判明するのだ。

・機関投資家
機関投資家は新しく台頭してきたビジネスへの既存の資金プールを持っている。これらの組織は短期間(3-10年)に大きなリターン(20-50倍)を得るために、成長性が非常に高い業界の中で、さらに成長が早いビジネスを探している。これらの厳しい要求により、従来型のインターネットに関係しないようなビジネスは検討から即座に却下されることになる。仮に投資先として選ばれたとしても、機関投資家からの要求のマイルストーンに見合うよう、サステイナブルでない成長の道を選ぶリスクをとることになる。



クラウドファンディングのポータルサイトは様々なビジネスおよび投資家にファンディングの新しい道を拓く。様々な種類の投資家のプールの出現により、スタートアップマーケットの中で女性やマイノリティのビジネスを含む、伝統的に資金調達が難しかったセクターに対してより多くの投資がなされ、また成長を促すことになるだろう。

(Title III Crowdfunding - Analysis of the Act に続く。次は具体的な条項に対するRocket Hubからの提案です)

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Rocket hub のクレアトオリジナルビデオは下記です。昨年にインタビューした時点では、エクイティへのクラウドファンディングはただのアイディアだったのですがいよいよ現実のものになってきました。
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